今回の3つをセットで見ると、私はかなり重要な結果だと考えます。
結論から言うと、

「インフレは想定以上に落ち着いている。一方、雇用市場は急激な悪化ではないものの、明確に強さを失い始めている」
という組み合わせです。
これは現在の米金融政策にとって、かなり「利上げを急ぐ必要性を低下させる」方向の材料です。
① 新規失業保険申請件数:20.9万件
予想20.2万件に対して20.9万件なので、予想より7,000件多い。
これは雇用市場にとっては若干悪材料です。
ただし、20.9万件という水準そのものは依然として低く、Reutersも「労働市場は安定している」と評価しています。4週間平均も大きく崩れていません。(Reuters)
したがって、
「雇用崩壊」ではなく「雇用市場の緩やかな冷却」
と見るのが適切です。
② 継続受給者数:177.7万件
ここはむしろ良い数字です。
予想180万件
→ 実績177.7万件
つまり、
予想より2.3万件少ない。
しかも前回177.6万件からほぼ横ばいです。
これは「失業者が急激に増えている」という状況ではないことを示しています。Reutersも、継続受給者数が177.7万人へ減少したことを、労働市場の底堅さを示す材料として報じています。(Reuters)
したがって雇用については、
新規失業者は少し増えているが、既存の失業者が長期化して急増しているわけではない
という状態です。
③ そして最も重要なのがPPI
ここはかなりインパクトがあります。
7月PPIは、
前月比:0.0% 予想:+0.2% 6月:-0.3%
でした。
つまり市場予想を0.2ポイント下回った。
しかも前年比ではPPIが4.7%となり、6月の5.5%から低下しています。(Reuters)
これはかなり重要です。
なぜなら、
「インフレが再加速するからFRBは利下げできない」
というシナリオに対して、今回のPPIはかなり逆方向だからです。
私が今回の数字で一番注目するポイント
実は、
「PPIが0.0%だった」こと以上に、雇用と物価が同時にFRBの利上げ圧力を弱めている
ことです。
整理すると、
| 指標 | 結果 | FRBへの意味 |
|---|---|---|
| 新規失業保険 | 20.9万件 | 雇用はやや冷却 |
| 継続受給 | 177.7万件 | 雇用市場はまだ底堅い |
| PPI | 0.0% | インフレ圧力が弱い |
| PPI前年比 | 4.7% | 6月5.5%から低下 |
つまり、
雇用:少し弱い インフレ:かなり落ち着いてきた
という組み合わせです。
現在のFRB政策金利は3.50~3.75%で、9月会合については、こうしたデータを受けて「据え置き」が意識されやすくなっています。(Reuters)
ドル円にとってはどうなのか?
ここが一番重要ですね。
私は今回の結果を、
短期的にはドル円にやや下方向の材料
と見ます。
理由は非常に単純です。
PPI低下 ↓ インフレ懸念後退 ↓ FRBの利上げ必要性低下 ↓ 米金利低下圧力 ↓ ドル売り
という流れになりやすいからです。
実際、今回のデータを受けて米10年債利回りは低下し、ドル指数も下落しています。(The Wall Street Journal)
ただし、ここで重要なのは、
「ドル円が一方的に暴落するような材料ではない」
ということです。
継続受給者数が増えていないため、米雇用市場そのものはまだ崩れていません。
したがって、
ドル円にとっては「強烈なドル売り材料」ではなく、「ドル高を支えていた米金利上昇シナリオを弱める材料」
と考えたほうがいいです。
そして、昨日のCPIと合わせると面白い
今回のPPI単独ではなく、7月CPI → 7月PPI → 雇用関連指標という流れで見るべきです。
今回、
CPI:インフレ鈍化 PPI:予想を大きく下回る 失業保険:雇用市場は緩やかに冷却
という形になっています。
これは市場にとって、
「インフレ再燃を警戒してFRBがタカ派化する」というシナリオの確率を下げる
方向です。
したがって私は、今回のデータを総合すると、
米金利
↓ やや低下圧力
ドル
↓ やや売られやすい
ドル円
↓ 基本的には上値が重くなりやすい
米株
↑ 金融政策面ではプラス
という評価です。
ただし、ドル円トレーダーとして一番警戒したいこと
ここからです。
今回のデータだけを見て、
「だからドル円は下がる」
と決めつけるのは危険です。
なぜなら現在のドル円は、
米金利 × FRB政策期待 × 日銀政策期待 × 日本の長期金利 × 為替介入警戒
で動くからです。
特に、今回のような「米インフレ鈍化+雇用冷却」は、基本的にはドル円下落要因ですが、日米金利差が依然として大きければ、下落が限定される可能性があります。
私なら今回の結果をこう評価します
ドル円:弱気材料 ★★★☆☆
米国債:買い材料 ★★★★☆
米株:やや買い材料 ★★★★☆
FRB利上げ観測:後退
そして非常に重要なのが、
「米経済が崩壊した」のではなく、「インフレが落ち着く一方で雇用も少しずつ冷えている」
という点です。
これはFRBにとってかなり扱いやすい環境です。
つまり、インフレを抑えるために追加利上げを急ぐ必要性が低下している。
この意味では、今回の数字はかなり市場にとって重要です。
特にドル円を分析するなら、今夜以降の米10年債利回りとドル円がPPIをどう消化するかを見るのが非常に重要だと思います。
そして、ここにCMEのドル円オプションOI・Strike別のCall/Put建玉を重ねると、今回の米指標が「実際にどの価格帯のドル円を動かしやすいのか」までかなり具体的に見えてきます。


