ウォーシュ議長のタカ派発言で早期利上げ観測急伸、9月相場は波乱含みの展開に

2026年8月29日

ウォーシュ議長のタカ派発言で早期利上げ観測急伸、9月相場は波乱含みの展開に

【最新動向】

ジャクソンホール会議において、米連邦準備制度理事会(FRB)のウォーシュ議長が発言を行いました。

同議長は、基調的なインフレの改善速度について確信が持てないとし、なお対応すべき課題が残っているとの見解を示しました。

具体的には、直近のPCEインフレ率が前年比で3.7%、過去半年間の年率換算では4.1%に達しているとし、この夏のインフレ指標が事前予想を上回ったとしても、根本的な傾向が明確に改善したとは言えないとの認識を示しています。

この発言を受けて、9月のFOMCにおける利上げ観測は急速に高まりました。

CME FedWatchでは発言前の35%前後から一時60%近辺まで上昇し、Kalshi、Polymarketなど複数の予測市場でも同様の急伸が確認されています。

短期国債利回りは上昇する一方、長期債利回りは低下し、いわゆるベアフラットニングの動きとなりました。

ドルも底堅さを見せ、政策の不確実性が意識される展開となっています。

なお、同議長は人工知能について、生産性の観点から歴史的な転換点になり得るとの前向きな見方も示しており、金融政策以外の話題にも言及していた点が特徴的です。

来週は雇用統計やISM製造業景気指数などの重要指標の発表が控えており、これらの結果次第で利上げ観測がさらに強まるか、それとも後退するかが試されることになりそうです。

なお、雇用統計発表明けの米国市場はレイバーデーのため3連休となる見込みで、ポジション調整の動きが強まりやすい週になると考えられます。

株式市場では、9月相場への警戒感が意識されています。

過去の統計では、S&P500指数の9月の平均リターンは主要月の中で唯一マイナスとなっており、上昇確率も5割を下回る傾向が続いてきました。

中間選挙の接近に加え、今年は9月下旬から10月にかけて複数の大型IPOが控えていることも需給面での懸念材料となっています。

とりわけアンソロピックについては、9月から10月にかけてナスダック上場を目指しているとの報道が相次いでおり、評価額は1兆ドルから2兆ドル規模になるとの観測も出ています。

同社の年間経常収益は既に650億ドルを超える水準に達しているとされ、市場からの資金吸収規模の大きさが意識されています。

半導体株については、エヌビディアの好決算を受けて一時的に上昇機運が強まったものの、マーベル・テクノロジーが決算発表後に急落する場面がありました。

同社は売上・利益ともに市場予想を上回ったものの、データセンター部門の伸びや次四半期のガイダンスが期待に届かず、高いバリュエーションに対する警戒感から株価が大きく調整しました。

これに連れる形でブロードコムやエヌビディアなど関連銘柄にも売りが波及し、半導体セクター全体の指数は主要株価指数に比べて大きく下落しています。

一方、ソフトウエア関連では対照的な動きも見られました。

セールスフォースが決算発表後に大幅高となり、アンソロピックとの提携拡大も好感されたことで、同業他社にも買いが波及しています。

来週はブロードコムが決算発表を予定しており、サムスン電子との協業拡大も支援材料として意識される中、発表後の株価反応が注目されます。

パロアルト・ネットワークスなど他のIT関連企業の決算も相次いで予定されており、AI関連投資の持続性を占う材料として注視されそうです。

【その他の考慮点】

見落とされがちな点として、今回のウォーシュ議長発言が、必ずしも明確な利上げの予告ではなかったという点が挙げられます。

同議長自身、フォワードガイダンスの弊害について言及し、市場が過度に先読みすることへの一定の距離感を示していました。

それにもかかわらず市場が大きく反応した背景には、7月のFOMC後の記者会見が曖昧であったことへの修正という側面があったとの指摘も出ています。

また、トランプ政権が利下げを強く求め続けている中で、ウォーシュ議長のインフレ重視の姿勢は政権との緊張関係を一段と際立たせる形となっており、この政治的な構図も今後の政策運営を見る上で無視できない要素と考えられます。

半導体セクターにおいては、マーベル・テクノロジーの下落が個別企業要因である側面も強く、必ずしもAI投資サイクル全体への懸念を意味するものではない点には留意が必要です。

同社の場合、データセンター部門の顧客集中度の高さや、超高水準のバリュエーションに対する利益確定売りという性格が強く、エヌビディアなど他の関連銘柄への影響は限定的であったとの見方も出ています。

さらに、9月相場の弱さについては、統計的な傾向はあるものの、実際には過去の実績でも上昇する年が4割超存在しており、季節性のみを根拠に相場全体を悲観するのは早計との指摘も多く聞かれます。

半導体関税を巡る新たな不透明感が浮上している点も、ブロードコムやマーベルなど個別企業の決算前の思惑的な売買を強めている要因と考えられます。

【私なりの見解】

今回のウォーシュ議長発言と、その後の市場の反応を見る限り、9月のFOMCは文字通りの五分五分の展開になりつつあると考えられます。

来週発表される雇用統計やISM指数の結果次第で、この確率は再び大きく振れる可能性があり、経済指標への感応度がこれまで以上に高まっている局面だと言えそうです。

特に、労働市場の指標が底堅さを示した場合には、インフレ重視の姿勢と相まって利上げ確率が一段と切り上がる展開も想定され、逆に指標が下振れれば、政策据え置きを織り込む動きに巻き戻される可能性もあるでしょう。

株式市場については、金利観測の変化と大型IPOラッシュという需給要因が同時に重なる9月相場となるため、通常の季節性以上にボラティリティが高まる展開になるかもしれません。

とりわけアンソロピックの上場は史上最大規模になり得るとの観測もあり、これだけの資金吸収が実現すれば、他のグロース株や既存のAI関連銘柄からの資金シフトが生じる可能性も否定できないと考えられます。

半導体セクターについては、エヌビディアやブロードコムのように顧客基盤が分散し、既に大規模な受注残を確保している企業と、マーベル・テクノロジーのように特定顧客への依存度が高く、期待値が既に極めて高い水準まで織り込まれた企業との間で、決算を境にした選別色が強まっていく可能性があると見ています。

来週のブロードコム決算は、AI関連インフラ投資の持続性を測る上で象徴的なイベントになりそうです。

同社の顧客であるアルファベットが大幅な設備投資拡大方針を示していることを踏まえると、良好な結果が出れば半導体セクター全体のセンチメント改善につながる一方、内容次第では再びマーベル同様の失望売りを招くリスクもあるでしょう。

金利、株式、そして大型IPOという複数の材料が9月に同時に交錯することを踏まえると、単一の指標や決算だけで相場の方向性を判断するのではなく、それぞれの材料がどのように連動して市場心理に影響を与えているかを継続的に確認していく姿勢が重要になってくると考えられます。

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