CME USD/JPY Option Daily Watch【2026.8.14(金)】

USD/JPYスポット参考値:159.40円前後(8/14未明時点の複数FXレート情報源の平均的水準)


1.CMEドル円オプション市場の現在の状況

8月14日時点のCME「Japanese Yen Options」の建玉(Open Interest)を集計すると、Call OIが100,800枚、Put OIが89,178枚、合計189,978枚となった。前日(8月13日)の合計は187,646枚だったので、1日で2,332枚(Call+671、Put+1,661)増加している。Put側の増加ペースがCall側より大きく、下値方向のヘッジ・ポジションが積み増された1日だったことがうかがえる。

なお本記事のStrike表記は、CME公表のStrike(例:6300)をCME仕様(1 point=0.000001ドル、Strike Price Interval $0.00005刻み)に基づき、

CME Strike ÷ 1,000,000 = JPY/USD Strike → 1 ÷ JPY/USD = USD/JPY Strike

の順で変換した数値を使用している(例:CME Strike 6300 → 0.006300 → 158.730円)。


2.満期別のCall / Put建玉

Monthly Optionsの上位3限月とWeekly Optionsの主要限月を合計OIでランキングすると次の通り。

限月種別Call OIPut OITotal OIPut/Call Ratio
9月限Monthly35,64438,06773,7111.068
12月限Monthly19,53515,76835,3030.807
10月限Monthly9,45716,47025,9271.742
8月限(Weekly Friday 第2週)Weekly12,4956,30418,7990.505
11月限Monthly4,8653,9128,7770.804

9月限(Monthly)が全限月の中で圧倒的に建玉が厚く、単独で市場全体の約39%を占める。Put/Call Ratioは1.068とほぼ均衡だが、わずかにPut優勢。10月限はPut/Call Ratio 1.742とPut偏重が際立つ一方、12月限はCall優勢(0.807)となっており、限月ごとにポジションの色合いが異なる点が特徴的だ。


3.主要Monthly Optionsの詳細分析

9月限(最大建玉限月)の内訳を見ると、

  • 最大Call OI:Strike 6400=156.250円、Call OI 5,050枚(前日比 -60)
  • 最大Put OI:Strike 6300=158.730円、Put OI 7,484枚(前日比 +2)

Call側は156.25円に、Put側は158.73円に集中しており、現在のスポット(159.40円前後)を挟んでCall/Putそれぞれのピークが下方に位置している。9月限単体でCallの分厚いゾーンは155〜157円台、Putの分厚いゾーンは158〜161円台に広がっている。

12月限は最大Call OIがStrike 8000=125.000円で6,048枚(前日比±0)と、現在値から大きく離れたディープOTM水準に積み上がっている。これは方向性のポジションというより、長期のテールヘッジ、あるいはストラクチャード商品絡みの建玉である可能性が高い(CMEデータだけではその性質は判別できない)。12月限の最大Put OIはStrike 5700=175.439円で3,913枚。

10月限は最大Call OIがStrike 6200=161.290円で3,099枚、最大Put OIがStrike 6300=158.730円で3,571枚。9月限と同様に158.73円がPutの節目として複数限月にまたがって意識されている。


4.Weekly Optionsの特徴

Weekly Optionsの中で突出して建玉が厚いのは「Weekly Friday Option Week 2」の8月限(Total OI 18,799枚)である。ただし本日は2026年8月14日(金)であり、8月の第2金曜日はまさに本日にあたる。つまりこのWeekly限月は本日が満期日であり、これから先の値動きへの影響は本日のセッション終了までに限定される点に注意が必要だ。

このWeekly限月の内訳(上位Strike)は以下の通り。

StrikeUSD/JPYCall OIPut OITotal OI前日比(File-to-File)
6325158.1034,1564,2918,447+12
6350157.4802,4071792,586+41
6275159.3631,1407641,904+419
6250160.0007852681,0530

158.10円にCall・Putともに厚く建玉が乗っており、本日の取引時間中はこの水準を挟んだピン留め(オプション満期特有の値動き収斂)が意識されやすい。特に159.36円のPutは前日から419枚増加しており、直近で新規のヘッジ需要が入った可能性がある。

次に厚いのは第3週・第4週のWeekly Friday(8月21日・28日満期)で、Total OIはそれぞれ3,150枚、3,635枚。第4週はCall OIがPut OIの3.7倍(2,863枚 対 772枚)と、Call優位が明確だ。

Weekly MondayやWeekly Wednesday、Weekly Thursdayなど他の曜日オプションは軒並みOIが数百〜数千枚規模と小ぶりで、市場全体のポジション構造への影響は限定的である。


5.Strike別の最大建玉

限月を横断してStrikeごとにOIを合計すると、以下のStrikeが上位に並ぶ。

USD/JPYTotal OICall OIPut OI出現限月数
158.730円18,5724,68713,88518限月
161.290円14,5994,6089,99116限月
157.480円13,1819,9403,24116限月
156.250円11,3568,6022,75418限月
160.000円10,7022,2428,46019限月
158.103円10,5465,0165,53013限月
153.846円10,5409,67186915限月
163.934円9,446619,38512限月

158.730円は18の異なる限月にまたがって建玉が存在し、しかもPut OIがCall OIの約3倍と偏っている。複数限月での集中度と規模の両面から見て、今回のデータで最も注目すべきStrikeと言える。


6.OI Changeから見えるポジション変化

前日ファイル(8/13)と当日ファイル(8/14)を突き合わせたFile-to-File OI Changeの上位は以下の通り(CME公表のOI Changeとは別に、ファイル間の実差分として算出)。

限月StrikeUSD/JPY前日比OI変化内訳
12月限 Monthly6000166.667+851Put +851
Weekly Friday第2週(8月限)6275159.363+419Put +419
Weekly Friday第3週(8月限)6350157.480+324Call +324
10月限 Monthly6400156.250+161Call +161
9月限 Monthly6225160.643+149Put +149
9月限 Monthly6325158.103+138Call +138

最も大きな増加は12月限166.667円のPutで、1日で851枚増加した。現在値から7円以上離れたディープOTM Putであり、急激な円高シナリオに対する保険的な建玉と見られるが、これが新規の買いか売りかはOIデータだけでは断定できない。

なお、これは2ファイル間(1日分)の比較であり、「複数日連続の積み上がり」を確認するには3日以上のデータが必要になる。今回はファイルが2営業日分のみのため、継続性の判定は次回以降のデータ蓄積を待って行う。


7.ドル円の重要オプションゾーン

近接Strikeをまとめてゾーンとして評価すると、以下の3つが際立つ。

  • 156.25円〜158.73円ゾーン(Call優勢〜均衡):156.25円・157.48円はCall優勢(Call/Put比が3倍前後)、158.10円・158.73円はPut優勢〜均衡。現在値(159.40円前後)のすぐ下に位置し、最も取引参加者の視線が集まりやすいゾーン。
  • 160.00円〜161.29円ゾーン(Put優勢):160.00円・161.29円ともにPut OIがCall OIの2倍前後。現在値のすぐ上〜やや上に位置し、上値を抑えるヘッジの節目となりやすい。
  • 163.93円〜166.67円ゾーン(Put偏重・ディープOTM):Call OIがほぼゼロで、Putのみが積み上がっている。急激な円高への備えとしてのテールヘッジゾーンと考えられる。

8.Gamma分析

CME公開のVOIデータにはImplied Volatility・正確な満期日・金利データは含まれていない。そのためGammaは実測値ではなく、以下の仮定条件による推定値である。

  • モデル:Black-76(CME Japanese Yen Optionsは欧州型(European-style)権利行使であり、Black-76モデルが妥当と判断)
  • 満期日:CMEの標準的な満期ルール(限月の第3水曜日の2営業日前)から近似計算。XLSに正確な満期日は存在しないため、あくまで近似。
  • スポット:159.40円(本記事作成時点の参考値)
  • 金利:簡略化のため無視(r=0と仮定)
  • IVシナリオ:8%/10%/12%の3パターン

9月限(残存約31日、T≈0.085年)の主要Strikeにおける推定Gamma(Black-76、1契約あたり)は以下の通り。

StrikeUSD/JPYCall OIPut OIGamma@8%Gamma@10%Gamma@12%
6300158.7302,7067,4840.10530.08480.0709
6250160.0001,0095,0830.10610.08530.0712
6350157.4804,3491,4940.09320.07830.0670
6400156.2505,0505110.07370.06720.0602
6200161.2907184,7980.09500.07960.0680

いずれのIVシナリオでも、Gammaは現在値に最も近い158.73円・160.00円付近で最大となる。IVが低いほどGammaのピークが鋭くなる(At-the-money近辺での価格感応度が高まる)点は一般的なオプション理論と整合的である。


9.GEX分析

GammaとOIを掛け合わせたGross GEX(Call・Put合算の絶対値ベース)と、Callを+、Putを-とする分析上の仮定に基づくSigned GEXを、IV10%シナリオ・契約サイズ1,250万円(CME仕様:1 point=0.000001ドル=$12.50/契約から算出)・スポット159.40円換算で試算した(いずれもモデル推定値)。

限月StrikeUSD/JPYTotal OIGross GEX(概算)Signed GEX(概算)
9月限6300158.73010,190約1.08億ドル相当約-0.51億ドル相当(Put優勢)
9月限6250160.0006,092約0.65億ドル相当約-0.43億ドル相当(Put優勢)
9月限6350157.4805,843約0.57億ドル相当約+0.28億ドル相当(Call優勢)
9月限6400156.2505,561約0.47億ドル相当約+0.38億ドル相当(Call優勢)
9月限6200161.2905,516約0.55億ドル相当約-0.41億ドル相当(Put優勢)

Signed GEXの符号は「Callを+、Putを-」とする分析上の仮定に過ぎず、実際のディーラーのポジション(ロング/ショートガンマ)を示すものではない。CME公開のOIだけでは、建玉が誰の買い・売りによるものかを判別できないため、この符号付けはあくまで市場参加者全体の建玉構成を可視化するための便宜的な処理である。

全体として158.73円・160.00円・161.29円はPut優勢のGEX、156.25円・157.48円はCall優勢のGEXとなっており、現在値を挟んで上下にGammaの色分けがはっきり出ている。


10.現在のドル円市場で意識されやすいStrike

Total OI・OI Change・複数限月での集中度・現在値との距離・推定Gamma/GEXを総合すると、以下の10水準が意識されやすい。

  1. 158.730円(Put OI13,885枚・18限月に分散・現在値から約0.67円)
  2. 161.290円(Put OI9,991枚・16限月に分散・現在値から約1.89円)
  3. 157.480円(Call OI9,940枚・16限月に分散・現在値から約1.92円)
  4. 156.250円(Call OI8,602枚・18限月に分散・現在値から約3.15円)
  5. 160.000円(Put OI8,460枚・19限月に分散・現在値から約0.60円、心理的節目)
  6. 158.103円(Call/Put均衡・本日満期Weeklyで最大OI・現在値から約1.30円)
  7. 153.846円(Call OI9,671枚・現在値から約5.55円)
  8. 163.934円(Put OI9,385枚・ディープOTM・現在値から約4.53円)
  9. 155.039円(Call OI7,817枚・現在値から約4.36円)
  10. 152.672円(Call OI6,097枚・現在値から約6.73円)

11.Resistance / Support候補

CMEデータから見た限りでの候補であり、必ずその価格まで動く、あるいはその価格で反発するという意味ではない。あくまで「意識されやすい価格帯」として整理する。

Resistance候補(現在値より上でPut OIが厚い=上値を抑えるヘッジが多い水準)

  • 161.29円(Put OI 9,991枚)
  • 163.93円(Put OI 9,385枚、ディープOTM)

Support候補(現在値より下でCall OIが厚い=下値を支えるヘッジが多い水準)

  • 158.73円(現在値に最も近い大型OI、ただしPut優勢でもある)
  • 157.48円(Call OI 9,940枚)
  • 156.25円(Call OI 8,602枚)

158.73円は現在値に最も近い巨大OI水準だが、Put OIの方が多いため、単純にSupportと決めつけるのは適切ではない。現在値からの距離が近いこと自体が重要であり、方向性の解釈には注意が必要だ。


12.今後注目すべきStrike

3〜5個に絞るなら、次のStrikeが今回のデータから特に注目される。

158.730円:Total OI 18,572枚は全Strike中最大。18の異なる限月にまたがって存在し、現在値からわずか0.67円。Put OIがCall OIの約3倍という偏りも特徴的で、9月限だけでもPut OI 7,484枚と最大値を記録している。

161.290円:Total OI 14,599枚で全体2位。Put OIがCall OIの2倍超(9,991枚 対 4,608枚)。現在値の上、心理的な節目である160円の少し上に位置し、上値の重石として意識されやすい。

160.000円:ラウンドナンバーであることに加え、19の限月に分散して存在し、現在値からわずか0.60円という近さが際立つ。Put OI 8,460枚とPut優勢。

158.103円:本日満期のWeekly Friday(第2週)で最大のOI(8,447枚)を抱える水準。Call・Putがほぼ均衡(4,156枚 対 4,291枚)しており、本日の取引時間中はこの近辺での値動きの収斂(ピン留め)が意識されやすい。ただし満期が本日中であるため、この効果は本セッション限りである点に留意。

166.667円:12月限Putが前日から851枚という今回最大の増加を見せた水準。現在値から7円以上離れたディープOTMだが、急速な円高シナリオへの備えとして新たなヘッジ需要が入った可能性がある。


13.オプション建玉を相場分析に利用する際の注意点

  • 本記事のOIはCME清算値ベースの建玉であり、「誰が買い・売りをしているか」(ディーラーか顧客か)を示すものではない。
  • OIの増加を「新規の買い」、減少を「売り」と断定することはできない。反対売買・ロールオーバー・新規売り建てなど複数の可能性がある。
  • 巨大なOIが存在するからといって、必ずその価格までドル円が動く、あるいはその価格で反発するとは限らない。あくまで「意識されやすい価格帯の候補」である。
  • Gamma・GEXは、IVや正確な満期日などCME公開データに含まれない情報を仮定して算出した推定値であり、実測値ではない。
  • 本記事はCMEオプション建玉データのみに基づく分析であり、これだけでドル円の方向性を断定するものではない。

14.まとめ

8月14日時点のCMEドル円オプション市場は、Call OI100,800枚・Put OI89,178枚の合計189,978枚で、前日から2,332枚増加した。増加のペースはPut側がやや上回っており、下値への警戒感がわずかに強まった1日だったと言える。

限月別では9月限(Monthly)が突出して大きく、市場全体の約4割を占める。Strike別では158.73円が全限月を通じて最大のOIを集め、複数限月に分散して存在する点からも市場参加者に強く意識されている水準と考えられる。一方、160.00円や161.29円といった現在値近辺〜やや上の水準にはPut優勢のOIが厚く、上値の重さを示唆する構造になっている。

本日満期を迎えるWeekly Friday(第2週)オプションでは158.10円に大きな建玉が集中しており、本セッション中はこの水準を挟んだ値動きの収斂に注意したい。

今後は本日確認された158.73円、160.00円、161.29円、158.10円、166.67円といった重要Strikeが、その後どのように変化していくのかをCMEデータの継続取得によって追跡し、前日比・前週比の推移からドル円オプション市場のポジション変化を継続的に分析していく。


本記事はCME Group公開のVOI(Volume/Open Interest)データに基づく分析であり、投資助言を目的としたものではありません。Gamma・GEXは一定の仮定に基づく推定値であり、実測値ではありません。