米国の同盟国や湾岸諸国が、水面下でその実行の危険性について警告していたこともあり、トランプ米大統領はイランの電力インフラを破壊するとの脅しを取り下げる判断に至ったようです。事情に詳しい複数の関係者が、そのように明らかにしています。
トランプ氏は23日、イランのエネルギー関連施設や発電所への攻撃計画を5日間延期すると説明し、戦争終結に向けた協議の結果を見極めたいとの考えを示しました。ただ、この判断の背景には、一部の同盟国から戦争が急速に深刻な局面へ向かう可能性があると指摘されていたことがあったとされています。
関係者によると、中東のパートナー国は米国に対し、イランのインフラに回復困難な打撃を与えれば、戦闘終結後に国家機能が大きく損なわれる恐れがあると伝えていたとのことです。非公開の協議であったため、関係者は匿名で話しています。
また、この方針転換は別の狙いとも重なっていたようです。発表は米国市場の取引開始直前に行われ、市場の不安に配慮した側面もあったと関係者は見ています。強硬姿勢の後退が伝わると、原油先物は大きく下落し、S&P500種株価指数は上昇、米国債利回りは低下しました。
元米国防総省高官のダナ・ストロール氏は、「さらなる緊張の激化を招くことが確実な脅しからは、一歩引く必要があったのではないでしょうか。民間のエネルギー施設を標的とすることは新たな一線を越えるもので、戦争犯罪と見なされる可能性も高かったと思います」と指摘しています。また、5日間の猶予と協議開始の発表が市場開始直前だった点についても、偶然ではないとの見方を示しました。
一方でトランプ氏は記者団に対し、イラン側が戦闘終結に向けた合意を強く望み、協議のために接触してきたと説明しています。22日にはウィトコフ特使とジャレッド・クシュナー氏がイラン当局者と会談し、イラン側が核物質を引き渡し、核開発を再開しないことで合意したと述べました。協議は23日も電話で続く見通しだということです。
さらに、ホルムズ海峡の管理について問われると、「私とイランの最高指導者で担う可能性もあるかもしれない」と語り、「状況を見守りたい。うまく進めば解決に近づくだろうが、そうでなければ徹底的な爆撃を続けるだけだ」と述べました。
こうした中、各国も米国とイランの接触を把握していたとしています。英国のスターマー首相は、報じられている協議を歓迎するとしたうえで、英国としてもその動きを認識していたと説明しました。また、英紙フィナンシャル・タイムズによると、パキスタンのアシム・ムニール陸軍参謀長が22日にトランプ氏と会談し、その後、シャリフ首相が23日にイランのペゼシュキアン大統領と協議したとされています。
ただし、イラン側はこれらの動きを否定しています。外務省は協議の存在を否定し、議会のガリバフ議長も「金融市場や石油市場を動かすためのフェイクニュースだ」と批判しました。
外交交渉に詳しい関係者の間では、今回の攻撃計画の停止には原油価格の上昇を抑える狙いもあったと見られています。トランプ氏自身もこれを認める発言をしており、「合意に至れば原油価格は大きく下がるだろう。すでに下がり始めているようだ。合意の可能性は非常に高い」と述べています。
しかし、このように複数の思惑が入り混じっていることから、ワシントンやウォール街では和平の実現性に対する疑念も強まっています。これまでトランプ氏が強い発言を撤回してきた経緯や、イラン側が核協議を長引かせてきた背景、さらには軍事行動の前にも水面下で協議が行われていた事例などもあり、今回の交渉が実質的な合意につながるのか懐疑的な見方が広がっているようです。
クリアビュー・エナジー・パートナーズもリポートの中で、「トランプ氏には意図的に誤解を招くような発信を行う傾向が見られる。今回示された期限も、近い将来に起こる別の重要な動きを覆い隠すためのものとなる可能性は否定できない」と指摘しています。

