中東の海上輸送における緊張が一段と高まり、石油や天然ガスの供給に対するリスクが拡大している状況です。特に、主要な海上ルートが同時に圧迫される可能性が指摘されており、エネルギー輸送全体に深刻な影響が及ぶ懸念が強まっています。
こうした懸念の背景には、イエメンの親イラン反政府武装組織フーシの動きがあります。この組織が中東の紛争に関与したことで、紅海周辺の安全保障環境が急速に悪化しました。もともと重要な航路であるバブルマンデブ海峡に対しても圧力が強まり、海上交通の不安定さが増しています。
この海峡は紅海とインド洋を結ぶ戦略的な要衝であり、航行の難しさから「涙の門」とも呼ばれています。最も狭い地点は約29キロに過ぎず、地理的にも極めて繊細な場所です。米エネルギー情報局によれば、2023年の最初の11カ月間だけでも、3000万トンを超える天然ガスがこのルートを通過しました。さらに、海上輸送される石油の約12%や大量のコンテナ貨物もここを行き来しており、その重要性は非常に高いといえます。
実際の緊張が表面化したのは、2023年10月にイスラム組織ハマスによる攻撃を受けて、イスラエルがガザ地区で軍事行動を開始してからです。この動きに呼応する形で、フーシは紅海において商船を標的とした攻撃を開始しました。攻撃停止が宣言されるまでに、100隻を超える船舶が被害を受けています。
この影響で、多くの船舶が安全を確保するためにアフリカ南端の喜望峰を経由するルートへと変更せざるを得なくなりました。その結果、航海日数の増加に加えて輸送コストも大幅に上昇しています。
さらに、フーシ側の情報当局は海外メディアへの声明の中で、バブルマンデブ海峡の封鎖について「現実的な選択肢」であるとの見解を示しました。一方で、イランの国営系通信を通じて伝えられた同国関係者の発言でも、米軍がホルムズ海峡の再開を試みる場合には、新たな緊張を招く可能性があるとして強い警戒感が示されています。
そのホルムズ海峡についても、この1カ月間は事実上閉鎖状態が続いており、地域全体の輸送網に大きな影響を与えています。この状況を受けて、サウジアラビアは代替手段として、西部ヤンブー港へとつながる日量700万バレル規模のパイプラインを活用し、輸出ルートの切り替えを進めました。その結果、紅海におけるタンカーの往来はむしろ増加する形となり、新たな緊張の焦点が移りつつあります。



