米S&P500は反発もイラン情勢の緊迫化で週後半に急落の懸念、AIブームと巨額投資負担が交錯する市場の行方

米S&P500は反発もイラン情勢の緊迫化で週後半に急落の懸念、AIブームと巨額投資負担が交錯する市場の行方

現在の米国株式市場は、一見すると落ち着きを取り戻したかのように見えますが、実は週後半にかけて再び大きく崩れるリスクを秘めています。S&P500種株価指数は先日、前日比0.54%高の6591.90で取引を終え、2日ぶりに反発しました。しかし、ドナルド・トランプ大統領が設定したイランとの交渉期限である28日朝が刻一刻と迫っており、投資家の間では強い警戒感が解けていません。市場のボラティリティを示す「恐怖指数(VIX)」は25.33と、18日連続で節目となる20を上回っており、先行きが非常に荒れやすい状態にあることを物語っています。

こうした不安定な動きの背景には、地政学リスクへの淡い期待と、ハイテク株をめぐる複雑な事情があります。まずイラン情勢については、ドナルド・トランプ大統領が当初予定していた攻撃を5日間延期したことで、ひとまず最悪の事態を免れたとの見方が広がりました。また、中国の習近平国家主席との首脳会談が5月に設定されたことも、安心感につながっています。一方で、AI(人工知能)分野では明暗が分かれました。アーム・ホールディングスが自社製半導体への参入を発表し、株価が16%以上も急騰したことは、AIブームの根強さを証明しています。しかしその一方で、市場を牽引してきた「マグニフィセント・セブン」と呼ばれる大手ハイテク企業たちは、莫大な設備投資が重荷となり、株価は冴えない展開が続いています。

具体的な個別の動きを詳しく見ていくと、市場の歪みがより鮮明になります。好調だったアーム社は、台湾積体電路製造(TSMC)に製造を委託し、メタ・プラットフォームズを顧客に迎える計画を立てており、5年後には収入が現在の5倍に膨らむという強気な見通しを示しました。これに対し、マイクロソフト社はデータセンターの新たな賃借契約によるコスト増が嫌気され、主要7社の中で唯一値を下げています。実際、昨年10月下旬の決算発表以降、テスラやエヌビディア、アップルなどの巨大企業は軒並み6%から15%ほど値を下げており、マイクロソフトにいたっては約28%も下落するなど、指数全体の重石となっているのが現状です。

さらに、今後の焦点となるのはイランとの和平交渉の成否です。ウォール・ストリート・ジャーナル紙の報道によれば、イランが核開発を数年間停止する代わりに、米国が経済制裁を段階的に解除し、ホルムズ海峡の封鎖を解くという案が浮上しています。原油先物価格が1バレル90ドル台まで下落したのも、こうした水面下でのやり取りへの期待感からです。しかし、ドナルド・トランプ大統領は一方で地上軍の増派を進めるなど強硬な姿勢も崩しておらず、28日の期限までに目に見える譲歩がなければ、事態は一気に泥沼化する恐れがあります。ブルームバーグのシニアファイナンシャルライターも指摘するように、軍事力による解決が困難であることを踏まえれば、週明けに向けて株価が急落するシナリオは十分に現実味を帯びていると言えるでしょう。