CME USD/JPY Option Daily Watch【2026.8.18(火) 】


1.CMEドル円オプション市場の現在の状況

8月18日時点のCME公開データを見ると、Call建玉合計は92,344枚、Put建玉合計は85,216枚で、Put/Call OI Ratioは0.92。前日(8月17日)との比較では、Call建玉が94,725枚から92,344枚へ2,381枚減少した一方、Put建玉は84,883枚から85,216枚へ333枚の小幅増加となった。

Call側の減少が目立つが、これは後述する「Weekly Monday Options Week3(8月限)」がこの間に満期を迎えて建玉がゼロクリアされたことが主因で、市場全体が急にCallを手放したという単純な話ではない。この点は本記事の第6節・第9節で具体的に見ていく。

全ストライクを通して最も建玉が厚いのはCME Strike 6300(USD/JPY換算158.73円)で、Call・Put合計20,608枚。現在値からわずか0.74円という近さで、これが今のドル円オプション市場における最大の「重心」になっている。


2.満期別のCall / Put建玉

主要限月のTotal OI(Call+Put)を大きい順に並べると次の通り。

限月Call OIPut OITotal OIPut/Call Ratio
9月限(Monthly)35,06938,34473,4131.09
12月限(Monthly)21,12815,80836,9360.75
10月限(Monthly)10,76716,57227,3391.54
11月限(Monthly)4,9083,9308,8380.80
Weekly Friday Week3(8月限)3,8002,4096,2090.63
Weekly Friday Week4(8月限)2,8758263,7010.29
2027年3月限(Monthly)2,4801,0403,5200.42

9月限(Monthly)が全限月の中で圧倒的に建玉が厚く、次いで12月限、10月限と続く。この3限月で市場全体のOIの過半を占めている。Put/Call Ratioを見ると9月限は1.09とPutがやや優勢、10月限は1.54とPut優勢がさらに強まる一方、12月限は0.75とCallが優勢になっており、限月によって market のポジション傾向が異なる点は覚えておきたい。

Weekly(週次限月)はFriday(金曜限)が最も種類・建玉ともに多く、Monday・Tuesday・Wednesday・Thursdayにも建玉が分散している。ただしCME公開データ上、各Weeklyの正確な満期日(カレンダー日付)は確認できないため、「Week1〜Week5」というCMEのラベル表記をそのまま使用している。


3.主要Monthly Optionsの詳細分析

9月限(最大建玉限月)

9月限で最も建玉が厚いのはStrike 6300(158.73円)でPut 7,479枚・Call 2,244枚。次いでStrike 6250(160.00円)がPut 5,103枚・Call 1,008枚、Strike 6350(157.48円)がCall 4,380枚・Put 1,488枚と続く。

現在値159.47円を挟んで、上側(158.10〜161.29円のゾーン)にPutが、下側(155.04〜157.48円のゾーン)にCallが厚く積み上がっている構図が明確に見える。

12月限

12月限最大は意外にもStrike 8000(125.00円)のCall 6,048枚。ただしこれは現在値から34円以上離れた深いディープOTMで、通常の値動きレンジでは直接的な影響は考えにくい水準にある(長期のテールヘッジ、あるいは過去のポジションが残存している可能性はあるが、CMEデータだけでは目的までは判別できない)。

現実的な射程内で見ると、Strike 6500(153.85円)のCallが3,166枚で、前日比+968枚という12月限内で最大の建玉増加を記録している(詳細は第6節)。

10月限

Strike 6200(161.29円)が最大でCall 3,099枚・Put 2,137枚、次いでStrike 6300(158.73円)がPut 3,571枚・Call 1,454枚。10月限は全体としてPut優勢(Put/Call Ratio 1.54)で、上方向・下方向双方にPutが厚い点が特徴的。


4.Weekly Optionsの特徴

直近のWeekly Friday Week3(8月限、8月第3金曜が満期と推定されるラベル)はStrike 6300(158.73円)が最大でCall 1,090枚・Put 1,199枚とほぼ拮抗。次いでStrike 6450(155.039円)にCall 1,139枚が集中している。

特筆すべきは「Weekly Monday Options Week3(8月限)」で、8月17日時点では複数のストライクにまとまった建玉(Strike 6350に1,281枚、Strike 6450に1,184枚など)が存在していたが、8月18日のファイルではこのブロックの建玉がすべてゼロになっている。これはWeeklyオプションの満期消化によるものと考えられ、CME公表のOI Changeもこれに整合する形でマイナスとして記録されている。前日比較を行う際は、こうした「満期によるゼロクリア」を新規のポジション解消(売り)と混同しないよう注意が必要である。


5.Strike別の最大建玉

限月最大Call StrikeCall USD/JPYCall OI最大Put StrikePut USD/JPYPut OI
9月限6400156.255,0716300158.737,479
10月限6200161.293,0996300158.733,571
11月限
12月限8000125.006,0485700175.443,913

全限月を横断した「最も建玉が大きいStrike」ランキング(Call+Put合計):

順位CME StrikeUSD/JPYCall OIPut OITotal OI
16300158.7305,52115,08720,608
26200161.2904,5919,72314,314
36350157.4808,4713,06111,532
46400156.2508,6392,70311,342
56500153.84610,14686911,015
66250160.0001,4318,4489,879
76100163.934619,3899,450
86450155.0396,0061,0687,074
96550152.6725,1091,6566,765
106000166.66705,8585,858

(Strike 8000=125.00円のCall 6,127枚は現在値から大きく離れたディープOTMのため、上表からは除外し別掲としている)


6.OI Changeから見えるポジション変化

CMEが公表する「OI Change」と、前日ファイルとの実差分である「File-to-File OI Change」は、原則としてほぼ一致する。今回の比較でも大半のストライクでこの2つは一致していたが、1件だけ明確な差異が見つかった。

StrikeUSD/JPY前日OI当日OICME公表OI ChangeFile-to-File OI Change
6500(9月限Call)153.853,6813,190-1-491

CME公表のOI Changeは-1枚だが、実際のファイル間差分は-491枚。この乖離の原因はCME公開データだけでは特定できない(権利行使、ポジション調整、集計タイミングのズレなど複数の可能性が考えられるが、断定はできない)。前日比分析を行う際は、CME公表値と自前の差分計算の両方を並べて見ることの重要性を示す一例と言える。

一方、前日比で最も建玉が増えたのは12月限Strike 6500のCallで+968枚(前日OI 2,198枚に対して+32%)。次いで2027年1月限Strike 6500のCallが+110枚(前日比+38%)と、6500円(153.85円)というやや離れた下値ゾーンにCallの新規積み増しが観測された。ただし、この増加が新規の買いポジションによるものか、売り建てによるものかはOI数字だけでは判別できない。


7.ドル円の重要オプションゾーン

近接ストライクをゾーンとしてまとめると、以下の4つの価格帯にOIが集中している。

ゾーンCall OIPut OITotal OI特徴
158.10〜161.29円(現在値周辺)13,92937,24451,173全ゾーン中最大。現在値をまたぐ最重要ゾーン。Put優勢
155.04〜157.48円24,5916,84131,432Call OIが集中。現在値のやや下
151.52〜153.85円20,2212,62422,845Callがさらに集中。12月限の新規積み増しもこのゾーン
161.94〜166.67円68923,60024,289Putが集中。現在値からやや離れた上方

現在値(159.47円)をまたぐ158.10〜161.29円ゾーンが総OIで突出しており、ここが目先のドル円オプション市場における最大の「重心」であることが確認できる。


8.Gamma分析

CME公開のVOIデータにはImplied Volatility・正確な満期日・金利データが含まれていないため、以下のGammaはすべて仮定条件に基づく推定値であり、実測値ではない。

前提条件(すべて仮定):

  • Black-76モデルを使用(CME円オプションはEuropean-style行使のため)
  • Forward ≈ Spot(159.47円)と近似(金利差データがないための簡略化)
  • 満期までの日数は、CME FXオプションの一般的な満期慣行(当該限月の第3水曜日の2営業日前)を仮定して算出した近似値であり、ファイルに記載された正確な満期日ではない
  • 9月限:残存約27日(T≈0.074年)
  • 10月限:残存約62日(T≈0.170年)
  • 11月限:残存約90日(T≈0.247年)
  • 12月限:残存約118年(T≈0.323年)※12月限は残存約118日の誤記ではなく118日
  • IVシナリオ:8%/10%/12%の3パターン

9月限・現在値近辺のGamma(1枚あたり、IV別)

StrikeUSD/JPYGamma@8%Gamma@10%Gamma@12%
6300158.7300.11210.09040.0757
6250160.0000.11380.09140.0764
6200161.2900.10090.08480.0726
6350157.4800.09670.08220.0707
6400156.2500.07330.06870.0624
6100163.9340.05210.05570.0543

現在値に最も近いストライク(158.73〜160.00円)でGammaが最大となっており、これはオプション理論上想定通りの形状。IVが上がるほどGammaのピークはなだらかになる(8%シナリオが最もタイトに現在値付近へGammaが集中し、12%シナリオでは分散する)。


9.GEX分析

GammaにOIと契約乗数(1枚=12,500,000円)を掛け合わせ、USD/JPYが1%動いた場合のドル建てGamma変動(Dollar Gamma)として試算した。IV10%シナリオを採用。Call側を「+」、Put側を「-」とする符号付け(Signed GEX)は、あくまで分析上の仮定であり、実際のディーラーがCallロング・Putショートのポジションを取っているかどうかを示すものではない。

9月限・GEX上位ストライク(IV10%、1%変動あたり)

StrikeUSD/JPYCall Gross GEXPut Gross GEXTotal Gross GEXSigned GEX(Call-Put)
6300158.73$25.4M$84.5M$109.9M-$59.2M
6250160.00$11.5M$58.3M$69.9M-$46.8M
6350157.48$45.0M$15.3M$60.3M+$29.7M
6200161.29$7.7M$51.0M$58.7M-$43.3M
6400156.25$43.6M$4.4M$47.9M+$39.2M

9月限全体のTotal Gross GEXは約4.95億ドル(Call側1.92億ドル、Put側3.03億ドル)で、Signed GEXは約-1.11億ドルとPut優勢。ただしこれは「Callを+、Putを-」という仮定上の符号であり、実際のディーラーのポジション方向(ロング/ショート・ガンマ)を意味するものではない点を改めて強調しておく。


10.現在のドル円市場で意識されやすいStrike

Total OI・OI Change・複数限月への分散・現在値との距離を総合すると、以下の10ストライクが目先意識されやすい水準として挙げられる。

  1. 158.73円(Total OI 20,608枚・18限月に分散・現在値-0.74円)
  2. 160.00円(Total OI 9,879枚・20限月に分散=全ストライク中最多・現在値+0.53円)
  3. 161.29円(Total OI 14,314枚・現在値+1.82円)
  4. 157.48円(Total OI 11,532枚・現在値-1.99円)
  5. 156.25円(Total OI 11,342枚・Call OI単独で全体最大級8,639枚)
  6. 153.85円(Total OI 11,015枚・12月限Callが前日比+968枚で急増)
  7. 163.93円(Total OI 9,450枚・Put比率極めて高い)
  8. 155.04円(Total OI 7,074枚)
  9. 152.67円(Total OI 6,765枚)
  10. 166.67円(Total OI 5,858枚・全量Put)

11.Resistance / Support候補

CMEデータから見えるOIの偏りは、教科書的な「Call=上値抵抗、Put=下値支持」の形とは逆になっている点が今回の特徴。

現在値より上(160円台〜166円台):Put OIが極端に厚い(161.29円・163.93円・166.67円など)。通常はPut OIは下値支持の目安とされるが、それが現在値より「上」に位置しているのは特殊な構造であり、意識されやすい価格帯ではあるものの、単純な支持線と解釈すべきではない。

現在値より下(153円台〜157円台):Call OIが極端に厚い(153.85円・155.04円・156.25円・157.48円)。同様に、Call OIが現在値より下に集中しているのも一般的な形とは逆であり、あくまで「意識されやすい価格帯の候補」として捉えるべきである。

いずれにせよ「巨大OI=必ずその価格まで動く」あるいは「巨大OI=必ず反発/反落する」という単純な解釈は禁物であり、今回のCMEデータはあくまで市場参加者のポジションの「厚み」を示す材料に留まる。


12.今後注目すべきStrike

  • 158.73円・160.00円:現在値を挟む最大の建玉ゾーンであり、今後もこのゾーン内でのOI変化が最も市場のセンチメントを反映しやすい
  • 153.85円:12月限Callの急増(+968枚)が観測された水準。今後も同様の積み増しが続くかどうかが焦点
  • 156.25円〜157.48円:Call OIが厚く、9月限の中心的なCallゾーン。9月限の満期接近に伴うガンマの効きが強まりやすい水準

13.オプション建玉を相場分析に利用する際の注意点

CMEのオプション建玉データは、あくまで「その時点でどの価格帯にポジションが積み上がっているか」を示すものであり、以下の点には注意が必要である。

  • OI増加を「新規の買い」、OI減少を「売り」と断定することはできない(売り建て・買い建て双方の可能性がある)
  • 巨大なOIが存在するストライクが「必ずその価格まで動く」ことを意味しない
  • CME公開データだけでは、そのポジションがディーラーのものか、実需筋のものか、投機筋のものかを判別できない
  • Gamma・GEXは、IVや満期日などの実測データが公開されていないため、あくまで仮定条件に基づく推定値である

14.まとめ

今回のCMEデータ(8月17日・8月18日)を通して見えた主なポイントは以下の通り。

  1. 158.73円(CME Strike 6300)に全ストライク中最大のOI(20,608枚)が集中し、現在値からわずか0.74円という近さにある
  2. 現在値を挟む158.10〜161.29円ゾーンが総OIで突出しており、目先の最重要ゾーンとなっている
  3. 現在値より上にPut OI、下にCall OIが偏るという、一般的なイメージとは逆の構造になっている
  4. 12月限Strike 153.85円のCallが前日比+968枚(+32%)と目立って積み増された
  5. 9月限Strike 153.85円のCallでCME公表OI Changeと File-to-File OI Changeの間に大きな乖離(-1枚 vs -491枚)が見つかり、前日比較の際は両方を確認する重要性が改めて示された

今回見つかった158.73円・160.00円・153.85円などの重要Strikeが、今後どのように積み上がり、あるいは解消されていくのかを、CMEデータの継続取得を通じて追跡していく。特に9月限の満期が近づくにつれてガンマの効きが強まりやすいことから、158円台〜161円台のゾーンでの建玉変化には引き続き注目したい。


本記事はCME Group公開のJapanese Yen Options VOI Detailsデータに基づく分析であり、投資助言を目的とするものではありません。Gamma・GEXは実測値ではなく仮定条件に基づく推定値です。オプション建玉の解釈には限界があることをご留意ください。

コメント