CME USD/JPY Option Daily Watch【2026.8.12(水)】


1.CMEドル円オプション市場の現在の状況

CME Japanese Yen Options全体の建玉(Open Interest)は、

  • Call OI合計:100,519枚
  • Put OI合計:85,589枚
  • Total OI:186,108枚
  • Put/Call OI Ratio:0.85

前日(8/11)ファイルとの比較では、Total OIは185,099枚→186,108枚と1,009枚の増加。Call OIが531枚、Put OIが478枚、それぞれ積み増しされており、方向感としては大きく偏っていません。

なお、CME公表のOI Change(当日分の建玉変化として公式に集計された数値)を見ると、Call+569枚、Put+478枚となっており、自前で計算したファイル間差分(Call+531枚、Put+478枚)とはCall側でやや差があります。この差は前日ファイル取得後の遅い時間の取引や、集計タイミングのズレによるものと考えられ、原因を断定できるものではありません。

USD/JPYのスポットは、本稿執筆時点(2026年8月12日)で概ね157.6~159.3円のレンジで推移しており、情報源によって多少のばらつきがあります。8月上旬に日米による円買い介入が観測されたと報じられており、通常より値動きが荒くなっている点には注意が必要です。以降の分析では便宜上159.00円を参照スポットとして使用します。


2.満期別のCall / Put建玉

Monthly Optionsの限月別集計(Total OI上位)は以下の通りです。

限月Call OIPut OITotal OIPut/Call Ratio
SEP 2635,56637,81073,3761.06
DEC 2619,43614,80534,2410.76
OCT 269,41016,37325,7831.74
NOV 264,8083,8968,7040.81
MAR 272,4561,0303,4860.42
MAY 271,97831,981N/A
JAN 271,2834371,7200.34

Total OIの約4割弱がSEP26限月(最も出来高・建玉が厚いいわゆる「最重要Monthly」)に集中しています。OCT26はPut偏重(Ratio 1.74)が目立ち、DEC26はCall偏重(0.76)ですが、これは後述のとおり125.00円という現在値からかなり離れたディープOTMコールの大口建玉(6,048枚)が押し上げている影響が大きく、単純にDEC26限月が「強気」というわけではありません。

Weekly Optionsでは、Weekly Friday Week 2(AUG26限月、満期は概算で8/14金曜)が19,502枚とWeekly全体の中で突出しており、直近の値動きに最も影響しやすい建玉です。


3.主要Monthly Optionsの詳細分析

SEP26(最重要限月・Total OI 73,376枚)

  • 最大Call OI:158.73円(CME Strike 6300)… ではなく、実際の最大Callは156.25円(Strike 6400)で5,151枚
  • 最大Put OI:158.73円(Strike 6300)で7,494枚 ― 全ストライクの中でも突出した1点
  • Put/Call Ratio 1.06とほぼ拮抗しつつ、Put側の建玉が絶対値でやや上回る

OCT26(Total OI 25,783枚)

  • 最大Call OI:161.29円(Strike 6200)で3,099枚
  • 最大Put OI:158.73円(Strike 6300)で3,544枚
  • Put偏重(Ratio 1.74)。158.73円という同一ストライクにSEP26・OCT26の両限月でPutが集中している点は、複数満期にまたがる「重要ストライク」の条件に合致します。

DEC26(Total OI 34,241枚)

  • 最大Call OI:125.00円(Strike 8000)で6,048枚。ただし前日から建玉変化ゼロで、現在値から34円以上乖離したディープOTM。ヘッジ目的の長期保有ポジションである可能性が高く、直近の値動きへの影響は限定的とみられます。
  • 現在値に近いレンジでは153.85円(Strike 6500)のCallが2,174枚と最大級。
  • 最大Put OI:175.44円(Strike 5700)で3,913枚 ― こちらも現在値から16円以上離れています。

4.Weekly Optionsの特徴

Weekly Optionsの中で突出しているのはWeekly Friday Week 2(AUG26限月)です。

Weeklyカテゴリ満期目安Call OIPut OITotal OI
Weekly Friday Week 2(AUG26)8/14(金)目安13,5605,94217,286※AUG26分のみ
Weekly Wednesday Week 28/19(水)目安3,2817204,001
Weekly Friday Week 4(AUG26)8/28(金)目安2,8337393,572
Weekly Friday Week 3(AUG26)8/21(金)目安1,8658312,696
Weekly Monday Week 38/17(月)目安1,826231,849

Weekly Friday Week 2(AUG26)は、Call・Putともに158.10円(Strike 6325)が最大建玉(Call 4,140枚/Put 4,291枚)となっており、Call/Putの両建てが同一ストライクに集中する、いわゆる「ピン止め」候補として意識されるパターンです。満期が目前(概算で8/14)に迫っているため、ガンマの効きが強く、短期的な値動きに与える影響は他のWeeklyより大きいと考えられます。

※満期日はCME公開データに正確な日付が含まれていないため、Weeklyの命名規則(Week番号)から一般的なCMEの満期慣行を踏まえて概算したものです。正確な満期日はCMEのカレンダーで別途ご確認ください。


5.Strike別の最大建玉

CME Strike・JPY/USD建値・USD/JPY建値の変換例は以下の通りです(実際に建玉が集中している主要ストライク)。

CME StrikeJPY/USD StrikeUSD/JPY StrikeTotal OI
63000.006300158.7318,541
62000.006200161.2914,533
63500.006350157.4812,203
64000.006400156.2511,166
65000.006500153.8510,835
62500.006250160.0010,791
61000.006100163.939,329
63250.006325158.109,315
64500.006450155.049,085
65500.006550152.677,773

全ストライク中で最大のTotal OIは158.73円(Strike 6300)の18,541枚。次いで161.29円(Strike 6200)が14,533枚、157.48円(Strike 6350)が12,203枚と続きます。1円刻みのゾーンで見ても158円台が27,856枚と圧倒的で、現在のスポット水準(158~159円台)に建玉が最も厚く積み上がっている状態です。


6.OI Changeから見えるポジション変化

CME公表のOI Changeベースで見ると、絶対値の大きい変化は以下の通りです(前日ファイルとの差分=File-to-File OI Changeとしても算出)。

USD/JPY StrikeFile-to-File OI Change
153.85円+195
157.48円-159
156.25円+154
161.29円+145
142.86円+133
160.00円+104
159.36円+99
158.73円-91

SEP26限月に限ると、154.44円のCallが+249枚と最大の増加、逆に157.48円のCallは-173枚と減少しています。Weekly Friday Week 2(AUG26)では160.64円のPutが+70枚、159.36円のPutが+22枚と、現在値のやや上のレンジでPutの新規積み増しが見られます。

ただし、これらのOI増加を「新規買い」、減少を「売り」と断定することはできません。新規の売り建て、あるいは既存ポジションの手仕舞いなど、複数の解釈が可能である点にご留意ください。


7.ドル円の重要オプションゾーン

Total OIをベースに1円単位でゾーン化すると、以下の通り建玉が集中しています。

  • 158円台ゾーン:27,856枚(全体で最大の集中ゾーン。現在値とほぼ同水準)
  • 161円台ゾーン:15,469枚
  • 160円台ゾーン:12,363枚
  • 157円台ゾーン:12,203枚
  • 156円台ゾーン:11,853枚
  • 153円台ゾーン:11,698枚(DEC26のCall集中を含む)

現在値(159円前後)を挟む形で158円台・160円台・161円台に厚い建玉が並んでおり、この近辺のレンジがオプション市場では最も意識されやすい価格帯といえます。


8.Gamma分析

重要な前提条件(必ずお読みください)

CME公開VOIデータにはIV(インプライド・ボラティリティ)、正確な満期日、金利情報が含まれていないため、以下のGammaはすべて推定値です。実測のGammaではありません。

  • モデル:Black-76(CME Japanese Yen Optionsの公式仕様は「American Style」ですが、正確なアメリカン式評価には別途早期行使プレミアムの調整が必要です。本稿では簡便的にBlack-76による近似を採用しています)
  • 原資産価格:159.00円(スポットを代用。フォワードポイントは考慮していません)
  • IVシナリオ:8% / 10% / 12%の3パターン
  • Time to Expiration:限月ごとに、CMEの一般的な満期慣行から概算した満期日を使用(正確な満期日ではない旨、前述の通り)

IV10%シナリオでGamma×OIが最も大きいストライクは以下の通りです(全限月合算、現在値付近のみ抽出)。

USD/JPY StrikeGamma推定値×OI(IV8%)同(IV10%)同(IV12%)Total OI
158.10円2,3902,2402,0359,189
158.73円1,8071,4481,20818,541
157.48円1,2101,1131,01412,203
160.00円1,2691,08193510,791
161.29円1,05590378714,533
156.25円76568261111,166

158.10円・158.73円の2ストライクにGammaが集中しており、現在値がこのレンジ内にとどまる限り、値動きが抑制されやすい(ピン止め圧力がかかりやすい)可能性があります。


9.GEX分析

GEXは「Gamma × Open Interest」を基本として算出した相対的な指標であり、実際のドル建てGamma Exposureとは単位が異なる簡易的な参考値です。ディーラーが実際にどちらの向きでポジションを保有しているかはCME公開データからは判別できないため、Signed GEXの符号については「Callを+、Putを-とする」という分析上の仮定を置いています。

Call/Put別のGEX(IV10%、Net = Call – Put)を見ると、

  • 158.73円:Net -730(Put優勢)
  • 163.93円:Net -419(Put優勢)
  • 161.29円:Net -334(Put優勢)
  • 157.48円:Net +580(Call優勢)
  • 156.25円:Net +379(Call優勢)
  • 153.85円:Net +330(Call優勢)

現在値より上のレンジ(160円台~164円台)ではPut優勢のGEXが目立ち、現在値より下のレンジ(153~157円台)ではCall優勢となっています。これは「上値が重く、下値が支えられやすい」という需給構造の仮説につながり得ますが、あくまでオプション建玉から見た推定であり、実際の相場のドライバーはFOMCや日銀会合、為替介入観測など他の要因が大きく影響する点にご注意ください。


10.現在のドル円市場で意識されやすいStrike

Total OI・OI Change・複数満期での集中・Gamma・現在値からの距離を総合的に評価すると、以下のストライクが重要度が高いと考えられます(10個程度抽出)。

  1. 158.73円(Strike 6300):Total OI 18,541枚で全体最大。SEP26・OCT26の両限月でPutが最大建玉。現在値からの距離も小さい。
  2. 158.10円(Strike 6325):Weekly Friday Week 2の最大建玉(Call・Put両方)。Gamma推定値も全ストライク中最大。満期が目前で影響度大。
  3. 161.29円(Strike 6200):Total OI 14,533枚。OCT26のMax Call。GEXはPut優勢。
  4. 157.48円(Strike 6350):Total OI 12,203枚。前日比でCall-159枚とやや減少も、依然厚い水準。
  5. 160.00円(Strike 6250):Total OI 10,791枚。前日比+104枚と増加傾向。ちょうどキリ番。
  6. 156.25円(Strike 6400):SEP26のMax Call(5,151枚)。前日比+154枚の増加。
  7. 153.85円(Strike 6500):前日比+195枚と全ストライク中最大の増加幅。DEC26のCallも厚い。
  8. 163.93円(Strike 6100):Total OI 9,329枚。現在値からやや上方に離れた重要ポイント。
  9. 155.04円(Strike 6450):Total OI 9,085枚。
  10. 142.86円(Strike 7000):前日比+133枚。現在値から大きく離れているが、変化幅として目立つ。

11.Resistance / Support候補

オプション建玉から見た「候補」であり、必ずその価格まで動くことを意味するものではない点にご留意ください。

Resistance候補(現在値より上)

  • 160.00円~161.29円ゾーン:Call OIも一定量ある一方、GEXはPut優勢で上値抑制的な需給構造の可能性
  • 163.93円:Total OIの厚いポイント

Support候補(現在値より下)

  • 156.25円~158.10円ゾーン:Call OIが厚く、Gammaも集中
  • 153.85円~155.04円ゾーン:直近でOI増加が目立つポイント

12.今後注目すべきStrike

特に以下は今後の推移を継続的に追跡する価値があると考えられます。

  • 158.73円:全体最大の建玉。SEP26のPut最大点であり、この水準を維持できるかが焦点。
  • 158.10円:Weekly Friday Week 2の満期(概算8/14)に向けて、ピン止め圧力の強さが試される。
  • 160.00円:前日比+104枚と増加傾向にあり、複数日の推移で継続的な積み増しかどうかを確認したい。
  • 153.85円:前日比+195枚と全ストライク中最大の増加。DEC26のCallも厚く、今後の推移に注目。

13.オプション建玉を相場分析に利用する際の注意点

  • CME公開のVOIデータには正確な満期日・IV・Delta・Dealer Positionは含まれていません。本稿のGamma/GEXはすべて仮定条件に基づく推定値です。
  • OIの増減を「新規買い」「新規売り」と断定することはできません。
  • 建玉が厚いストライク=必ずその価格で反発・反落するという意味ではなく、あくまで「意識されやすい価格帯の候補」です。
  • CMEのオプションはドル円そのものではなく円先物を原資産とする商品であり、本稿ではCME仕様に基づきCME Strikeを「JPY/USD建値→USD/JPY建値」に変換したうえで分析していますが、フォワードポイントや金利差の影響は簡略化しています。
  • ドル円の方向性は、オプション建玉だけでなく、金融政策(FOMC・日銀)、為替介入観測、マクロ指標など複数の要因を踏まえて総合的に判断する必要があります。

14.まとめ

8/12時点のCME Japanese Yen Options VOIデータからは、158円台に建玉が最も厚く集中しており、なかでも158.73円・158.10円の2ストライクが現時点で最も意識されやすい水準として浮かび上がりました。SEP26限月はPut優勢、OCT26限月もPut偏重である一方、153円台~157円台のレンジではCall優勢のGEXとなっており、上値と下値でやや異なる需給構造が見て取れます。また、Weekly Friday Week 2(満期概算8/14)は158.10円にCall・Putともに建玉が集中しており、目先の値動きに与える影響が大きいポイントとして注目されます。

今後はこのCMEデータを継続的に取得し、前日比・前週比の変化を追跡することで、ドル円オプション市場のポジション変化を継続的に分析していきます。特に今回浮かび上がった158.73円、158.10円、160.00円、153.85円といった主要ストライクについて、建玉がどのように積み上がる、あるいは解消されていくのかを次回以降のレポートで追っていきます。


※IV(インプライド・ボラティリティ)や正確な満期日はこの公開データには含まれていないため、Gamma/GEXはすべて仮定条件に基づく推定値であり、実測値ではありません。詳細は本文および末尾の注意点をご確認ください。


本稿はCME Group公開データに基づく独自分析であり、投資助言ではありません。データの解釈には推定・仮定が含まれており、実際の相場を保証するものではありません。