トランプ米大統領が米東部時間23日午前7時5分、イランのエネルギー関連インフラや発電所への攻撃計画を5日間延期するとSNSに投稿したことを受け、金融市場は大きく反応しました。株価指数先物は寄り付きでの上昇を示唆し、原油価格は13%余り急落、米国債利回りも低下いたしました。
ただ、その後まもなくイラン側が「実りある会話」があったとする発言内容を否定しましたが、市場の反応は限定的でした。ウォール街では、この一連の発信を、トランプ大統領が少なくとも対イラン戦争の終結に前向きであることを示すサインとして受け止める向きがあったようです。
同日の米国株式市場では、S&P500種株価指数が一時2.2%上昇し、5月以来の大幅高となりました。米2年債利回りは一時3.79%まで低下し、ブレント原油は1バレル=100ドルを下回りました。為替ではドルが下落し、欧州の株式や債券市場も下げから持ち直してプラス圏で取引を終えています。
一方で、トランプ大統領がイランとの戦争を容易に終結させられるのかについては、依然として懐疑的な見方が残っています。その影響もあり、米国株は上昇幅を縮小し、大統領の発言だけで相場を大きく動かすことの難しさも意識されました。
また、ハートル・キャラハンの最高投資責任者は、「もはやトランプ大統領の判断だけで状況が動く局面ではなく、関税問題の時とは性質が異なるのではないかと懸念しています」と述べ、「市場の動向を常に意識して行動するとの期待はやや現実的ではないのではないでしょうか」と指摘しています。
中東情勢の緊張緩和への期待から、資産クラス全般で急反転が見られましたが、その背景には市場の不安定さもあります。第2次トランプ政権1年目には、市場が急落すれば方針転換が行われるとの見方が広がり、いわゆる「TACO」トレードが定着しました。貿易政策やグリーンランドに関する発言、さらにはFRBへの批判が出るたびに、押し目買いの動きが強まっていた経緯があります。
しかし、今回の対イラン情勢はその前提を揺るがしています。ホルムズ海峡の実質的な封鎖に伴うエネルギー価格の上昇でインフレ懸念が高まり、主要中央銀行による利上げ観測も強まりました。その結果、景気減速とインフレが同時に進むスタグフレーションのリスクが意識され、今月は世界の債券時価が2.5兆ドル以上減少したとされています。
RBCウェルス・マネジメントのストラテジストは、「トランプ大統領が原油価格の上昇を抑えようとしているのは明らかですが、最終的には債券市場の動きが政策判断に影響を与えている可能性もあります」と分析しています。
さらに、前週末20日には、トランプ大統領が中東での軍事行動の縮小を検討しているとSNSで発信していましたが、その直後にはイランに対し強い警告を出し、その後また攻撃計画の延期を表明するなど、発言が大きく揺れ動いています。
こうした一連の対応については、これまでの誇張や不正確な発言と相まって、金融市場における信頼性の低下につながっているとの見方も広がっています。みずほのストラテジストも、ホワイトハウスの発信が市場のポジショニングを混乱させていると指摘しています。
同ストラテジストは、「難しいのは戦争の行方を読むことではなく、ホワイトハウスの発信に対して市場がどの程度反応するのかを見極める点にあります」と述べ、「戦争終結が近いという確かなシグナルなのか、それとも単なる曖昧な発言なのか、市場は判断に迷っている状況です」と分析しています。
BCAリサーチのチーフストラテジストも、「今後7日から10日以内に状況が改善しなければ、世界経済が新型コロナ禍のように停滞する可能性があります」と指摘し、「今回の発表は、実体経済の急速な悪化リスクを大統領が認識していることを示しているのではないでしょうか」と述べています。
今回の発表には、市場の混乱に不安を抱く投資家心理を意識した側面もあったと関係者は説明していますが、結果として株式や国債は上昇幅を縮小して取引を終えました。トランプ大統領の発言は、あくまで短期的に市場を支える措置に過ぎないのではないかという見方も、徐々に強まっているようです。

