2025年10月12日
日経平均株価、政局不安と米中対立で下落警戒―AI相場の減速リスクに注目
【考察】
今週(10月14日~17日)の日経平均株価は、国内外の不安材料が重なり、下落への警戒感が強まる展開となりそうです。国内では、公明党の連立離脱によって政局が不安定化し、与党内の調整難航が意識されています。こうした内政リスクが投資家心理を冷やす一方で、海外では現アメリカ大統領トランプ氏が、中国からの輸入品に対して100%の追加関税を発動する方針を表明。これにより、米中対立が再び激化する可能性が浮上しました。
さらに、中国はレアアースの輸出規制を強化する方針を打ち出しており、半導体やAI(人工知能)関連分野を中心にサプライチェーンへの影響が懸念されています。トランプ氏が今月末のAPEC(アジア太平洋経済協力会議)で予定されている中国・習近平国家主席との会談が実現しない可能性に触れたことも、市場の不安を一段と高めました。
こうした政治的・経済的リスクの高まりを受け、VIX指数(米国の恐怖指数)と日経平均VI(日本のボラティリティ指数)がそろって上昇しました。これは、投資家が相場の変動リスクに対して警戒を強めていることを示しています。
先週はAI関連株の上昇が日経平均を押し上げましたが、今週はその牽引役に陰りが見える可能性があります。特に、半導体関連株を中心に調整売りが強まれば、AI相場の勢いが鈍化し、日経平均の下落圧力が増すと見られます。主力株の動向には注意が必要です。
株価指数CFD「JAPAN225」の週間予想レンジは4万3000円から4万7000円と想定され、上値の重い展開が続く可能性が高いでしょう。
【その他の考慮点】
国内の政局動向は依然として不透明です。公明党の連立離脱により、与党内では新たな首相を選ぶ首班指名選挙の調整が難航しています。臨時国会の召集が20日以降にずれ込む見通しの中、政党間の多数派工作や候補者調整をめぐる報道が今週も相場の重石となる可能性があります。
野党が玉木雄一郎代表を中心に候補を一本化する動きを見せた場合、市場は政権交代リスクを意識し、防衛関連銘柄や「高市トレード」で注目された銘柄の売りが強まる懸念もあります。特に、三菱重工業、川崎重工業、IHIといった防衛主力株の値動きには注目です。これらの銘柄が下落基調に転じた場合、日経平均全体の調整圧力が強まると考えられます。
また、テクニカル面では、JAPAN225が50日線や75日線を下方ブレイクするかどうかが重要な分岐点となります。これらのラインを維持できなければ、相場が4万3000円水準まで下落するリスクが高まります。一方で、4万4450円や4万3400円付近には複数のサポートラインが重なっており、反発が入りやすいポイントでもあります。
米中関係において、仮にAPECでの対話再開に向けた報道が出た場合は、一時的な反発につながる可能性もあります。しかし、国内政局の混乱が続く限り、上値追いは限定的となりそうです。
【全体的な見通し】
総合的に見て、今週の日経平均株価は下落リスクを意識した慎重な相場展開が予想されます。AI相場の勢いが鈍化し、米中対立の再燃が投資家心理を冷やすなか、国内の政治的不透明感も加わって買いが入りにくい状況です。
4万3000円付近では押し目買いの動きが見られるかもしれませんが、反発しても4万7000円を明確に超えるのは難しいとみられます。特に、テクニカル的な抵抗水準である4万6000円を突破できるかどうかが短期的な焦点となります。
トランプ政権による対中関税強化と、中国側の対抗措置の動向が、今週の相場のカギを握るでしょう。短期的には、政局の混乱とAI関連株の調整圧力が相場全体の重石となる見通しです。投資家はリスク管理を徹底し、ボラティリティの拡大に備える姿勢が求められます。
【用語解説:初心者向け】
VIX指数
米国の株式市場で投資家の不安心理を数値化した指標。一般に「恐怖指数」と呼ばれ、数値が上がるほど市場が不安定であることを意味します。
日経平均VI
日本版のVIX指数で、日経平均株価の将来の変動率を予測する指標です。VIX同様に、上昇すると市場の不安感が高まっていることを示します。
AI相場
人工知能(AI)関連の企業や技術が注目され、それらの株が全体相場を押し上げている状況を指します。近年では、半導体やクラウド関連企業の上昇が主なけん引役です。
CFD(差金決済取引)
実際に株式や指数を保有せず、価格の変動差だけで利益や損失を得る金融取引のことです。少ない資金で大きな取引ができる反面、損失リスクも高くなります。
フィボナッチ・リトレースメント
相場の上昇や下落の途中でどの程度の価格調整が起こるかを予測するテクニカル分析手法。代表的な水準として23.6%、38.2%、61.8%などがあります。
RSI(相対力指数)
株価の「買われすぎ」や「売られすぎ」を判断するための指標。数値が70を超えると買われすぎ、30を下回ると売られすぎとされます。
MACD(移動平均収束拡散法)
短期と長期の移動平均線の関係から、相場のトレンド転換を見極める指標。短期線が長期線を下抜けると「デッドクロス」となり、下落のサインとされます。
サポートライン
株価が下落しても、それ以上は下がりにくいとされる水準。買い注文が入りやすく、反発のきっかけとなることが多いです。
レジスタンスライン
株価が上昇しても、それ以上は上がりにくいとされる価格帯。売り圧力が強くなりやすく、上値の壁として意識されます。
高市トレード
高市早苗氏が新総裁・首相候補として注目を集めた際に、関連銘柄(特に防衛関連株など)が買われた相場の動きを指します。
APEC(アジア太平洋経済協力会議)
アジア太平洋地域の経済協力を目的とした国際会議。加盟国・地域の首脳が一堂に会し、貿易や安全保障など幅広いテーマについて協議します。


