2025年7月16日
トランプ氏によるロシア支援国への制裁案とその影響
【考察】
トランプ前大統領が、ロシアの輸出品を購入している国々に対して、100%の関税を課すと発言したことは、非常に強硬な姿勢を示すものでした。狙いは、ロシアの経済的な支え手である中国やインドに圧力をかけることで、プーチン大統領に対してウクライナとの停戦交渉を促すことにあります。しかし、仮にこの関税措置が実行された場合、アメリカ国内の物価上昇を招くリスクが高く、実際には自国経済への打撃にもつながりかねません。むしろ、ロシア産原油に対して直接的な制裁を科す方が、より的確な対応となる可能性があります。
【その他の考慮点】
過去2か月間でトランプ氏の対ロシア姿勢はさらに強硬になっており、その背景にはプーチン政権によるウクライナ首都キーウへの空爆の激化があります。欧米諸国が制裁を強める中でも、ロシア経済が予想以上に安定している理由は、中国やインドがロシア産の原油を大量に購入していることにあります。調査機関の報告によると、2025年6月だけでインドが36億ユーロ、中国が35億ユーロ相当のロシア原油を輸入したとのことです。
こうした取引を止めることが戦争終結への重要な一歩と考えられますが、トランプ氏が提案する「2次関税」は、中国やインドといった主要貿易相手国にも大きな負担を強いるうえ、結果的にアメリカの消費者にも悪影響が及びます。特に、電子機器や医薬品といった必需品の価格上昇は避けられず、報復関税などのさらなる摩擦も懸念されます。
【全体的な見通し】
現実的に有効なのは、「2次制裁」の活用です。ロシアとの取引に関与する企業や金融機関を個別に狙った制裁を行うことで、中国やインドに対してもドル決済網を通じた圧力をかけることが可能です。これは過去の対イラン制裁でも実績があり、同盟国の協力があれば、軍事衝突や全面経済対立を避けながら、ロシア産原油の流通を抑え込む効果が期待できます。
特に重要なのは、ロシアの原油輸出に直接打撃を与えることで、ロシア経済に対する実効性のある圧力となる点です。現在、OPECが減産体制を緩和している影響で、原油価格は1バレルあたり65ドル前後まで下落しており、制裁による価格高騰の懸念も抑えられる状況です。
なお、投資家の多くはトランプ氏の発言をまだ半信半疑で見ており、50日間の猶予期間が設けられていることからも、実行に移されるかどうかは不透明です。これまでの「相互関税」のように、時間を稼ぎながら交渉を進める戦術とも受け取れます。ただし、ロシアに真の影響を与えるためには、象徴的な威嚇よりも、実際に痛みを伴う経済的措置を講じる必要があります。
【用語解説:初心者向け】
・2次関税:ある国が、特定の第三国と取引をする国に対して追加の関税を課すことです。今回はロシアと取引する中国やインドへの関税が例です。
・2次制裁:政府が、制裁対象国と取引する企業や銀行に対して制裁を科す措置です。ドル決済を使えなくするなどの手段があります。
・ドル建て決済システム:国際的な取引で広く使われているアメリカドルでの支払いネットワークのことです。アメリカが制裁に利用しやすい仕組みです。
・原油先物価格:将来の原油価格を予測して売買される価格で、市場の期待や不安を反映しています。
・OPEC(石油輸出国機構):世界の主要な産油国で構成され、原油の生産量調整などを通じて価格安定を図っています。

