超長期国債をめぐる情勢には、現在ふたつの大きな逆風。

超長期国債をめぐる情勢には、現在ふたつの大きな逆風が吹いています。一つは、金利の上昇が止まらないこと、もう一つは市場の需給構造の変化です。7月の参議院選挙を前に、財政拡大を求める声が高まっており、その影響で超長期国債の金利が市場の予想を上回るペースで上昇しています。海外の一部投資家は買いを進めていますが、以前の主要な買い手であった生命保険会社に代わる存在としては、やや力不足のようです。今のところ金利上昇の歯止めは見えず、財務省や日本銀行が発行額の抑制や既発債の買い入れといった対策を講じるかどうかが注目されています。

昨日行われた20年国債の入札は記録的な不調に終わり、その結果、超長期国債の売りが加速しました。30年債と40年債の金利は過去最高を更新し、今日もその流れは続いています。具体的には、30年債が3.185%、40年債が3.635%に達しています。背景には、日銀の利上げ観測の後退と、日本の財政拡張への懸念により、国債利回りの傾き(イールドカーブ)が急激に変化していることもあります。

アメリカのモルガン・スタンレーでマクロ戦略の責任者を務めるマシュー・ホーンバック氏は、「30年債の金利がこれほど高くなるとは思っていなかった」と驚きを示しています。彼によれば、海外投資家の関心は高まっているものの、国内の生命保険会社のような安定した需要は減少しており、それが現在の金利上昇につながっているとのことです。

これまで超長期債は、保険契約という長期の責任を負う生命保険会社が中心となって購入してきました。しかし、国内の大手生保10社が先月公表した2025年度の運用計画では、規制対応が一段落したことなどを理由に、国債保有額は減少または横ばいになると見込まれています。これが需要の減少を示唆しています。

さらに、大手都市銀行なども超長期債の売り手にまわっています。今年初めまでは、日銀の利上げが続くとの見方から、利回りの差が縮まる(フラット化)と予想されていましたが、アメリカの通商政策の混乱などを背景に利上げ観測が後退。その結果、これまで持っていたポジションを解消する動きが進み、超長期債への売り圧力が強まりました。

一方で、新たに超長期債の買い手として浮上したのが海外投資家です。日本証券業協会のデータによると、外国人投資家は3月と4月にそれぞれ2兆円以上、過去最大規模で超長期国債を買い越しています。ホーンバック氏は、ドル資産の代替先として日本の長期国債が注目されているとし、「高い利回りに加え、為替ヘッジによるプレミアムも魅力的で、米国債よりも投資妙味がある」と述べています。とはいえ、国内投資家の存在感が薄れる中で、海外勢の買いがどこまで支えになれるかは不透明です。

日銀のイールド・カーブ・コントロール(YCC)政策の終了を見越して、かつて日本国債を空売りしていた英RBCブルーベイ・アセットマネジメントも、先月から30年債を買い始めました。同社のマーク・ダウディング最高投資責任者は、「ドイツ国債よりも高い利回りが魅力的で、価格の変動が落ち着けば、今は様子見している投資家も再び市場に戻ってくるだろう」と話しています。

現在の円債市場では、財務省や日銀による公的支援を求める声が高まっています。JPモルガン証券の山脇貴史氏は、「本来は市場原理に基づく価格形成が理想だが、今のような超長期債の急落が続けば、信用格下げや追加財政措置などをきっかけに、さらなる混乱を引き起こす恐れがある」と指摘しています。そのうえで、公的な対応によって投資家心理を安定させることが重要だとしています。

具体的な対策としては、日銀が国債買い入れの対象年限を延ばすことや、買い入れ区分の見直し、財務省による発行量の抑制、さらに既発債を市場から吸収する「買入消却(バイバック)」といった流動性の改善策が考えられています。

三井住友トラスト・アセットマネジメントの稲留克俊シニアストラテジストは、来週以降も超長期国債の入札が続くこと、さらに7月の参議院選に向けて野党を中心に財政拡大を求める声が強まりやすいことから、金利のさらなる上昇に警戒が必要だと述べています。「30年債の金利が3%、40年債が3.5%に到達したのは通過点に過ぎず、もはや数週間前には想像もできなかった状況だ。このままいけば、選挙前に30年債が3.5%、40年債が4%になっても不思議ではない」との見方を示しました。

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