グローバルサウスの時代が近づく中、金融資本の流れにも大きな変化。

グローバルサウスの時代が近づく中、金融資本の流れにも大きな変化が起こりつつあります。

アメリカが長年にわたって築いてきた「例外的な立場」が終わりを迎えつつある今、その影響は世界の経済・金融秩序にも及んでいるように見えます。投資家の関心は、こうした変化の中で金融資本が今後どこへ向かうのかという点に集まっています。

資金の移動先としてまず候補に挙がるのは、経済規模で世界第2位を誇り、準備通貨を有する欧州です。欧州市場は取引の厚みや流動性に加え、法の支配もしっかりしており、一定の安心感があります。

一方で、「グローバルサウス」と呼ばれる新興・途上国は、政治的な不安定さや制度面の不備、政策の予見可能性の低さといったリスクが目立ち、一般的にはまだ投資先としての魅力が薄いと見られがちです。

ただし、現在の世界経済や投資環境は、急速かつおそらく不可逆的な形で変化しています。特定の地域に資金を集中させるリスクを避けたい投資家にとっては、分散投資の観点からグローバルサウスへの注目が高まっている可能性もあります。

これまでグローバルサウスの国々は、金融市場の中で相応の存在感を示すことができていませんでしたが、今後は国際的な資金配分の見直しによって恩恵を受ける可能性があります。

ドイツ銀行のストラテジストチームは先日発表したレポート「グローバルサウス:世界第4位の経済圏への戦略的アプローチ」の中で、グローバルサウスの時代が到来していると述べています。このレポートでは、G77に属する134カ国に加え、メキシコ、トルコ、そして一部の中央アジア諸国を含めた地域をグローバルサウスと定義しています(中国、ロシア、シンガポールなどは除外されています)。

注目すべきはその経済的な規模です。このグループは世界の労働人口のおよそ3分の2を占め、エネルギーや重要鉱物の生産では約4割、世界貿易においては25%のシェアを持っています。さらに、過去10年で世界の外国直接投資(FDI)の約4分の1を引き寄せる結果となっています。

実際、ボストン・コンサルティング・グループによると、2023年におけるグローバルサウス向けのFDIは5,250億ドルに達し、先進国向けの4,640億ドルを上回りました。

今後、これらの国々が政治・経済・安全保障の面で足並みをそろえていくかどうかは、まだ明確にはわかりません。ただし、すでに中国からグローバルサウスへの資金移動が始まっている兆しが見られます。ドイツ銀行のレポートでは、近年グローバルサウスに向けた投資が比較的安定している一方で、中国への投資が大きく減少していると指摘しています。

また、ここ数十年における中国の経済成長は、歴史的にも際立った出来事でした。1990年には中国のGDPが先進国の約2%にすぎなかったのが、2021年には33%にまで成長しました。この数字は、当時のグローバルサウス全体とほぼ同じ水準です。

しかし最近では、中国の経済成長は特にコロナ禍以降に減速しており、国際通貨基金(IMF)は2030年時点で中国のGDPが先進国全体の35%程度にとどまる一方、グローバルサウスは40%に達すると予測しています。

ドイツ銀行は「米国による貿易摩擦が中国に集中する中、グローバルサウスは分散投資と価値創出の新たな受け皿となり得る」との見方を示しています。

株式投資の観点でも、グローバルサウスには成長の余地が大きく残されています。2023年末時点で、世界の株式時価総額に占めるグローバルサウスの割合はわずか11%にすぎず、そのうち半分をインドとサウジアラビアが占めています。もし米国株への過剰な資金集中がやや緩和されるだけでも、グローバルサウス諸国の株価に大きな影響が出る可能性があります。

ただし、リスクも依然として存在しています。その多くは、トランプ前大統領が導入した関税措置に伴う市場の混乱を通じて浮き彫りになりました。国際金融協会(IIF)のデータによれば、2025年4月には新興国市場への証券投資が一時的に停止したことが確認されています。

たとえトランプ政権が一部の関税措置を撤回したとしても、依然として米国の政策変更によって影響を受けるリスクを懸念する投資家は少なくないでしょう。IIFは「現在の状況はこれまでとは異なり、一時的なショックではなく構造的な政策変更である。したがって、短期間で状況が元に戻る可能性は低い」と分析しています。

大切なのは、急速な変化そのものよりも、それによって引き起こされた世界経済の構造的変化だと言えるでしょう。実際、2018年にトランプ氏が最初の貿易戦争を開始して以来、中国の輸出はグローバルサウスの「リーダー的な経済国」に対して2倍に増加しています。

現在、アメリカへの信頼が揺らぐ中、中国も欧州もそれぞれに輸出先の多様化を図っていく流れはごく自然なものと考えられます。

こうした背景を踏まえると、グローバルサウスの時代がすぐに到来するとは限りませんが、そう遠くない将来に本格的に始まる可能性は高いと見てよいのではないでしょうか。

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