今後の利下げペースが緩やかになる可能性を示唆

2025年6月18日

米金融政策と今後の利下げ見通し

【考察】
アメリカの中央銀行にあたる米連邦準備制度理事会(FRB)は、6月17日から18日にかけて開かれた連邦公開市場委員会(FOMC)で、政策金利を据え置く決定をしました。FRBの当局者たちは、年内の利下げは実施される可能性が依然として高いとしながらも、トランプ政権の関税政策がもたらしたインフレ圧力を考慮し、今後の利下げペースが緩やかになる可能性を示唆しています。

今回の声明では、失業率に関する表現に微妙な変化が見られ、FRBが労働市場の安定性にこれまでほどの自信を持っていない姿勢がうかがえます。経済のリスクバランスについても、これまでの「均衡」から「やや減速」方向へと見方が傾いているようです。FRBはインフレだけでなく、労働市場の動向にも重点を置いており、とくに移民政策の強化や労働参加率の低下が、失業率の信頼性を損なう要因になると見ているようです。今後、パウエル議長が、イエレン前議長のように幅広い労働指標について発言する可能性もあります。

【その他の考慮点】
関税による経済への影響については、4月の「解放記念日」直後に懸念されていたような深刻な影響は、今のところ見られていません。インフレへの影響は依然として不透明ではあるものの、管理可能かつ一時的であるという見方をFRBも共有しているように思われます。また、地政学的な不安要素が高まっている一方で、全体的なマクロ経済リスクは後退しており、その証拠として金融市場の落ち着きや、信用スプレッドの縮小が挙げられます。

【全体的な見通し】
今回のFOMCでは金利据え置きが予想されていたため、市場の注目は四半期ごとに公表される「ドット・プロット(金利予測図)」に集まりました。これまで2回の利下げが年内に行われるとされていましたが、一部には1回に修正されるのではとの予想もありました。しかし、今回も2回の利下げ予測が維持され、市場はこの判断を好意的に受け止めています。

ただし、2025年末時点のインフレ率見通しは上昇する一方で、同年の経済成長率の予測は下方修正されました。このため、FRBは金融政策の基本方針を変えずに維持したと考えられますが、今後インフレ率の上昇が続くようであれば、予定されている利下げ回数が減る可能性があるとの見方も出てきています。

【用語解説:初心者向け】

・FRB(米連邦準備制度理事会)
 アメリカの中央銀行で、日本の日銀にあたります。物価の安定や雇用の最大化を目的に、政策金利を操作しています。

・FOMC(連邦公開市場委員会)
 FRBの金融政策を決める会議で、年に8回程度開催されます。ここで政策金利の引き上げや引き下げが決まります。

・政策金利の据え置き
 中央銀行が金利を引き上げも引き下げもせず、現状の水準を維持する判断のことです。

・利下げ
 政策金利を引き下げることです。一般的には景気を刺激するために行われます。

・インフレ
 物価が継続的に上昇する現象です。インフレが進みすぎると生活コストが上がり、消費者にとって負担になります。

・ドット・プロット
 FOMC参加メンバーが今後の金利見通しを点で示したグラフで、金融市場では重要な判断材料とされています。

・信用スプレッド
 信用リスクの差を示すもので、企業が借り入れる金利と安全な国債金利との差です。これが縮まると金融環境が安定していると判断されます。

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