米国株式市場の動向と日経平均の先行き

2025年5月10日

米国株式市場の動向と日経平均の先行き

【考察】

5月9日の米国株式市場は、方向感の定まらない展開となりました。ダウ平均株価は前日より119.07ドル下落し、41,249.38ドルで取引を終えました。一方、ナスダック総合指数は小幅に上昇し、0.78ポイント高の17,928.92となりました。

英国との貿易協定合意を背景に、他国との交渉進展への期待感が高まりました。また、トランプ米大統領が対中関税の引き下げに言及したことも好材料と受け止められましたが、その後、ホワイトハウス報道官が「無条件での関税引き下げは検討されていない」との立場を示したため、市場には警戒感が広がりました。結果として、買いと売りが交錯する不安定な値動きとなりました。

同日の大阪取引所の夜間取引(ナイト・セッション)では、日経225先物が日中終値より60円安の37,460円で終了しました。

【その他の考慮点】

4月の米国市場では、「株安・債券安・通貨安」という、いわゆる「トリプル安」の状況が何度か発生しました。しかし、現在はベッセント財務長官やラトニック商務長官といった金融出身の要人に対する市場の期待感が高まっており、相場は徐々に落ち着きを取り戻しつつあります。

米商品先物取引委員会(CFTC)の最新データによれば、5月6日時点の円買いポジションは17万6,859枚と、過去最大級の水準に達しています。今後、この円買いの解消が進めば、ドル買い・円売りが一段と進み、円安傾向が続く可能性もあります。円安が進めば、輸出企業の収益改善により、日経平均株価の押し上げ材料となります。ただし、米国の関税政策次第ではリスク回避による円買いが再び活発化する可能性もあるため、過度な楽観は禁物です。

【全体的な見通し】

TOPIX(東証株価指数)は11営業日連続で上昇するなど、足元ではやや過熱感も見られますが、200日移動平均線(2687ポイント)を明確に上回っており、全体としては強い上昇トレンドが維持されています。

日経平均株価も、上昇に転じた25日移動平均線との乖離率が+7.7%程度と、それほど乖離していないため、過熱感は限定的です。また、投資家の不安心理を示す日経平均VI(ボラティリティー・インデックス)が3月末以来の低水準まで低下しており、東京市場に漂っていた先行き不透明感は徐々に払拭されつつあります。

来週は日本企業の決算発表が集中するため、好決算を背景に大型株への資金流入が強まれば、日経平均やTOPIXの一段高が期待されます。さらに、週末に予定されている米中貿易交渉において前向きな進展が見られれば、日経平均は200日移動平均線(37,938円)を明確に超え、3月26日以来となる38,000円台の回復を試す動きになるかもしれません。

【用語解説:初心者向け】

・ダウ平均株価:アメリカを代表する30社の株価を基に算出された株価指数。アメリカ経済全体の動向を表す指標の一つです。

・ナスダック総合指数:ハイテク企業を中心とした株価指数で、成長株の動向を知るのに役立ちます。

・関税:外国からの輸入品に対して課される税金で、貿易政策に大きな影響を与える要因です。

・CFTC(米商品先物取引委員会):アメリカの金融先物市場を監督する政府機関。投資家の売買動向を把握するためのデータを提供します。

・円買いポジション:投資家が将来の円高を見越して円を買っている状態のことです。

・ドル高円安:アメリカドルの価値が円に対して高くなる状態。輸出企業にとっては有利になる傾向があります。

・移動平均線:過去一定期間の株価の平均を線で表したもので、株価のトレンドをつかむために使われます。

・ボラティリティー・インデックス(VI):市場の不安定さを示す指数で、高いほど相場の変動が激しいことを意味します。

・TOPIX(東証株価指数):東証プライム上場の全銘柄を対象にした株価指数で、日本株全体の動きを表します。

・トリプル安:株価、債券価格、通貨価値が同時に下がることを指し、経済の不安定さを表す状況です。

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