円安加速の構図―有事のドル買いと金利差拡大が為替を押し下げる
足元のドル円相場では、円安方向への圧力が一段と強まっている状況です。日本時間27日の取引では、1ドル=159円台半ばを中心に推移し、一時は159円台後半まで上昇しました。こうした流れの背景には、有事のドル買いに加え、日米の金利差拡大や投機的な円売りの動きが重なっている点が挙げられます。さらに、日本政府が為替介入に踏み切った場合でも、その効果が限定的にとどまる可能性も意識されています。
まず大きな要因として挙げられるのが、イランでの戦争を受けた金融市場の変化です。リスク回避局面では安全資産とされるドルが選好されやすく、「有事のドル買い」が継続しています。実際、ニューヨーク市場での円の対ドル相場は、イラン攻撃前と比較して下落しており、他通貨と比べても円安の進行が確認されています。
こうした動きに加えて、原油価格の上昇がインフレ圧力として意識され、米国の金融政策見通しにも影響を与えています。市場では米連邦準備制度理事会(FRB)が年内に利上げを行う確率が意識されており、12月時点の政策金利は現状を上回る水準が織り込まれています。この結果、米国の長期金利は上昇し、日米の金利差は拡大しています。これがドル円相場における円安の基調を支える構図となっています。
また、こうした環境下では投機筋の動向も無視できません。米商品先物取引委員会(CFTC)のデータによると、非商業部門では円の売り越しが大きく拡大しており、過去の水準に迫る規模となっています。かつては円買いに傾く場面も見られましたが、戦争の影響を受けて再び円売りへと傾斜しているとみられ、為替市場の流れを一段と加速させる要因になっています。
一方で、日本銀行の金融政策にも変化の兆しが見えています。原油高に伴う物価上昇圧力を受け、金融市場では年内に複数回の利上げが行われるとの見方が強まっています。政策金利の見通しは現状よりも高い水準に設定されており、利上げペースは米国を上回る可能性も指摘されています。
その裏付けとなるのが、新たに公表が始まった物価指標です。この指標は、消費者物価指数から政策要因などの特殊な影響を取り除いたもので、足元の物価上昇の強さをより明確に示しています。2月のデータでは、こうした特殊要因を除いた物価上昇率が日本銀行の目標である2%を上回る結果となり、金融引き締めへの環境が整いつつあると受け止められています。
このような状況を踏まえ、日本政府は円安是正に向けて警戒を強めています。財務省の閣議後会見では、石油関連の動きに影響された投機的な為替変動にも言及し、必要であれば断固とした措置、すなわち為替介入を含めた対応を行う姿勢が改めて示されました。過去には、米国の協力を背景に為替介入観測が強まり、短期間で円高が進んだ場面もあります。
ただし、現在の国際環境はそれとは異なる様相を見せています。米国側は有事におけるドル高の動きを一定程度容認しているとみられ、資本流入によるドルの強さを経済の信認の裏付けとして捉えている側面もあります。さらに、戦争による株価下落や金利上昇の中でドルまで売られる事態は、いわゆる「米国売り」と受け止められるリスクがあるため、ドル高を維持したい意図も読み取れます。
加えて、米国大統領はイランへの攻撃延期を決定するなど、戦況の拡大を抑制する動きも見せており、金融市場における米国の信頼維持を重視している姿勢もうかがえます。
こうした点を踏まえると、日本政府が為替介入を実施したとしても、米国のスタンス次第では円高方向への効果が限定的になる可能性があります。仮に短期的に円高が進む場面があったとしても、中期的には金利差や投機的な動きに支えられた円安圧力が残り続ける展開も想定されます。

